金八先生マニアックス 「金八先生マニアックス」は、TBSドラマ「3年B組金八先生」を勝手に深読みし分析するサイトです。リンクはご自由に。

ホーム放送年表/鑑賞ガイド > 第7シリーズ13話

3年B組金八先生 鑑賞ガイド


◆ 第7シリーズ 13話 「命とは何だろう…? 金八先生、涙の授業」

クラスが再びバラバラになったその翌日。金八(武田鉄矢)が不安に駆られながらも教壇へ向かうと、そこには半数の生徒が着席していた。残る生徒もショックと戦いながら三々五々登校する。前の晩、金八は全ての生徒のもとを訪ね、言葉をかけていたのだった。やがて、未だ意識の戻らない小塚崇史(鮎川太陽)を除く全員が顔を見せた。

「話し合う機会を持ちたい」という生徒たちの声を制し、授業を始める金八。一人一人に将来の夢を尋ね、「だが『大人になるまで生きること』を夢として語る子どももいる」と命の尊さを訴える。金八は若くして世を去った妻・里美(倍賞美津子)の話を例に、里美は今でも自分の支えになっているが、崇史は違うと主張。生きて死ぬということの意味を知る生徒たち。そこに崇史の意識が回復したという朗報がもたらされる。

3Bは明るさを取り戻し、麻田玲子(福田沙紀)は稲葉舞子(黒川智花)への、丸山しゅう(八乙女光)は崇史へのわだかまりが解けていく。崇史の奇跡的な回復を金八と抱き合って喜んだしゅうは、家に残る覚醒剤を処分しようと決意する…のだが、既に依存の兆候が現れており、全てを廃棄するには至らないのだった。

05年1月21日放送

脚本: 清水有生

演出: 加藤新

視聴率: 14.6%

DVD: 第6巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● 「命の授業」、グッときました。
○ サブタイで特別授業の回だと分かるでしょ。ということは、金八がいい話をして生徒が心を衝き動かされて、クラスがまとまっていくんだろうな、と展開が簡単に予想できるじゃない。大筋が分かっているのに、それでもやはり感動させられてしまうというのは、実はスゴイことだよね。
● 脚本の小山内さんが降りちゃってどうかという話もありますけど、「武田」金八のパワーというのも物凄いなぁと再認識。金八はまだまだ大丈夫ですね。
○ 教室のシーンがスタートから41分間も続く(途中しゅうの自宅のシーンが80秒だけ挿入)珍しい構成なんだけれど、こういう内容なら別にロケ遅れてもいいじゃない、教室のシーンだけで十分いけるじゃない、と思っちゃう。
● 生徒がみんな出てきたのがはじめ不自然にも思えたんですが、金八先生、前の晩に3B生徒全員の家を回ったというじゃないですか。夜回り先生にも通ずるエピソードで、このことがすごく重要だったんじゃないかと気づきました。かつ非常に労力が要ったんだろうとも思いましたね。最後金八先生、土手で叫んでましたけど、結構限界に近かったんですね。
○ 「俺が教え子を死なせるはずないんだ。分かったか、バカヤロー!」ってね。命の授業のシーンではギリギリ涙を我慢しながら見てたんだけどさ、ここできたね。辛かったんだよねぇ金八さんも。そして頑張ったよねぇ。泣けた。
 
● 命の授業、シマケンと伸太郎が話し合いを提案してるのに、それを遮って始めてるんですよ。
○ 半数しか生徒いなかったからなぁ。それにやらせてもまた犯人探しをするだけだと思ったんじゃないかな。前回のラストもそうだったし、今回も直明が「クラスはバラバラだけど、3B'sだけはまとまっていこうと話し合った」なんて自信満々に言ってるくらい、クラス全体としての同胞意識は薄いんだから。
● 直明は正義感があってリーダーシップも執れるのに、もうひとつ思慮が浅いというか…。
○ ただ、前日のショックを引きずった3Bの沈んだ空気がどこから変わったのかというと、3B'sが教室に入ってきてからなんだよね。
● あっ、確かにそうですね。「コンテスト優勝」「海外生活」「世界を飛び回る」なんてスケールの大きい夢を語ったのは3B'sならではという気もしますし、伸太郎の劇団落選の過去を暴いて盛り上げたのも3B'sの仕業でした(笑)。
○ あれでガラッと変わったよね。伸太郎はアンプのようなところがあって、自分ひとりでなんとか場の空気を変えようと頑張っても空回りしがちだけれど、3B'sや普段の量太のような陽気な生徒と組んで初めて爆発的に明るさを増幅させるようなところがあるじゃない。
● アンプといえば増幅器=拡声器。車掌と仲が良い理由はここに?
○ まぁそこまでは分からないけれど(笑)、頑張っていた伸太郎が3B'sのおかげで生きてきて盛り上がっていったということは言えそうでしょ? 思えば3B'sは1話の段階で既に揉め事を仲裁する役割を担っていたし、重要なグループなんだよね。
● それにしてもこの部分の伸太郎には笑わせてもらいました。「チンチン猫ちゃんズ」なんてことも言ってるし(笑)。なにより劇団のことを突っ込まれて照れること照れること。ただ量太に「金使ったのに勿体無い」というようなことを言われて顔色変わってましたよね。給食費の件もあるし、やっぱり家計を気にしてるんでしょうか。
 
○ まぁそんな状況がありつつ、「生きる」とは、「死ぬ」とは、というお説教に入っていく訳だよね。スモーキー・マウンテンや最近の大津波という海外の話題を出すことで、崇史というごく身近な命の灯を強調。同時にその効果で遠く離れた国の状況までも身近に考えさせる伝え方というのは本当、スゴイ。
● そして天路先生の話に繋げるんです。もう亡くなった人の話なんですけど、金八先生は「美人でなぁ、オレ恋してなぁ、手のひらが温かく、唇が柔らく…」と天路先生の「生」をありありと話すんですよねぇ。素敵でした。
○ 天路先生は息を引き取る間際、「一人一人の生徒に優しい金八先生でいてくださいね」と言ったというじゃない。
● はい。
○ このちょっと前、金八先生は天路先生のことを生徒に説明する時、どういう人だと言ったか覚えてる?
● え〜と、巻戻してみますね。なになに?「皆の知ってるあの保健室にいて、養護の先生をやってました。一人一人の生徒に優しくてねぇ…」 あっ!同じだ。
○ そう。天路先生は一人一人の生徒に優しかった。そしてその遺志を金八に託したということなんだよ。金八さんもまた、その思いを継いでずっと忘れずに思い置くことで、支えられ、天路先生が今でも生き続けていると感じられるわけだし、天路里美という人が存在した意味があるというものだよね。
● なるほど〜。そこで崇史の件と繋がってくるんですね。じゃあ崇史は何を残していったというんだ、残された人の支えになる強い志が今の崇史にあるといえるのかという。「ならないな、ならないな、絶対ならないな!」
○ あの否定は力強かったよねぇ。「意識が回復しました!」も力入ってた。そりゃ鼻水も出ちゃうわ(笑)。
● さっき、最後に金八先生が「俺が教え子を死なせるはずない」と叫んだところに追い込まれ具合を見た、なんてこと言いましたけど、「里美がついてる俺が簡単にへこたれるか、バカヤロー!」という気持ちも込められていたんですね。
○ ありがたいことだよね。
 
● ラスト、しゅうは覚醒剤を残してしまいました。
○ このままいい話で終わってうやむやにされてしまったらどうしようかと思っていて、全部は捨て切れなかったという展開にむしろホッとした。もちろんしゅうには全て捨てて欲しかったけど、頭では分かっていても止められないのがクスリの恐さだから。
● すると終盤は相当壮絶なことに…。
 
 あなたの夢はなんですか?
■ チビあす : 幼稚園の先生
■ 博明 : 車掌
■ 智美 : 大好きな人と結婚して、いつまでもラブラブな家庭を作ること
■ 直明 : 3B'sでジュニアダンスコンテストに優勝して、できればダンサーになりたい
■ 真佐人 : 直明と同じ
■ 康二郎 : 海外で暮らせたらいいなぁ
■ 浩美 : スッチーになって、世界を飛び回りたい
■ ソン : 金儲けして大金持ちになる。で、いい医者に見せて弟の耳を治してやる
■ デカあす : モデルになる。パリコレとか、世界で活躍していきたい
■ 伸太郎 : (小学校の卒業文集によると)大物俳優になること
■ シマケン : NGOに入って、戦争で苦しんでいる人を助けたい
■ 奈穂佳 : 詩人になって、人の心を打つような詩を書きたい
■ 比呂 : 渋谷に住んで、渋谷で働いて、渋谷で遊ぶんだ
■ ウガ : お料理の先生
■ 量太 : ベンチャーを立ち上げて、プロ野球のオーナーってとこかな
■ 哲史 : 東大に入って、高級官僚になります(幼稚園の頃からの夢)
■ 和晃 : 母さんから離れて暮らすこと
■ 舞子 : みんなで3Bを卒業したい
■ ヤヨ : みんなといっしょ
■ しゅう : (金八「後で聞くから考えといてくださいね」)
■ 孝太郎 : べつにねぇよ
■ 隼人 : どっかのサラリーマンになって、仕事帰り酒飲んでさ…(でも忍者)
■ 有希 : 親の小児科継いで医者になりたいけど…
■ (祥恵、玲子、淳、信子、麻子、典子は質問されず。崇史は入院中。)
 小ネタ/周辺状況拾い読み
◆「夢を語り合うことは、君たち少年少女に与えられた特権なんです」と金八は言う。第4シリーズ主題歌「スタートライン」の中では、恋や夢を語り合うのではなく一人ぼっちになるためのスタートラインに着こう、と言っている。現3Bがまだ幼いということを示した言葉だったように思う。
◆伸太郎が小5の時、劇団たんぽぽのオーディションを受けていたことが発覚。残念ながら不合格だったらしい。バラしたのは隼人と真佐人、康二郎。
◆そのシーンで、祥恵が必死に笑いを噛み殺そうとしているのがとても微笑ましい。
◆伸太郎はギター侍・波田陽区に影響を受けたツッコミを披露。
◆量太の夢「ベンチャーを立ち上げてプロ野球のオーナーってとこかな」を受けて、金八「インターネット楽ちん」(当然、楽天のモジリ)なんて会社作ってくださいよ、と発言。そこに伸太郎「お前はチンチン程度だ。チンチン猫ちゃんズ」とおバカ発言。ちなみに「猫ちゃん」とは量太の自宅であるスナックの名前。
◆有希が医者の娘だったとは!
◆里美は乳がんだったと判明。
◆金八のあの感動的な授業にもらい泣きせず、役柄どおり終始にこやかに聞いていたヤヨ役・岩田さゆりさんはエライ。
 過去の金八シリーズでは
■来てくれてありがとう
…冒頭、崇史の件にショックを受けながらも登校してきたウガに対し、金八は「来てくれてありがとう」と言う。第1シリーズ21話、東大受験に失敗した浅井雪乃の兄の自殺を聞いた金八は、3B生徒に「合格に漏れた者も皆先生のところへ帰ってきてくれてありがとう」と涙ながらに礼を言った。
■里美
…金八の妻・里美は、劇中で説明があったように元桜中養護教諭。旧姓天路。第1シリーズから登場し、若い金八をよく補佐して時に引っ張る存在だった。第2シリーズ後結婚、第4シリーズ前に乳がんのため死去。里美の死のショックは金八にとって相当なもので、その影響で一時教職を離れたほど。
また、第6シリーズ4話では、抗がん剤の副作用に苦しみ自暴自棄になる幸作に対し、金八は里美の死を引き合いに出して「年齢の順序を超えて先に死ぬな」と訴えたことがある。
■死ぬ順序
…金八の「親が子より先に死ぬのがものの順序だ」という訴えは、その第6シリーズ4話の他、第1シリーズ21話第2シリーズ23話などでも見ることができる。シリーズを通して一貫した主張。
■遺志を継ぐ
…金八は里美の遺志を継いで優しい教師になろうとしたが、第2シリーズ8話では、君塚校長が亡き兄の遺志を継いで教師になったと明らかにしている。
■鼻水
…崇史の回復を喜ぶあまり、鼻水ダラダラのアップショットを撮られてしまった金八。しかし第6シリーズ4話、悪性リンパ腫で苦しむ幸作に命の尊さを訴えた時に記録した鼻水噴出量を超えてはいない。あの時はちょっとしたゼリー並の量で、金八はそれを袖で拭ってしまった。
 みなさんからの印象的なお便り
◆命の授業の時、チラッと沖田浩之さんを思い出しました。 (やまだれいこさん)

12話≪ - 放送年表 - ≫14話

金八先生マニアックス