不定関係代名詞は、関係代名詞と不定代名詞が結合した言葉で、一語にまとまっていますが、関係代名詞の部分と不定代名詞の部分がそれぞれ別々に、次の表のように格変化をします。
男性・中性の属格・与格では、短い別形も用いられます。
中性単数主格・対格形は、接続詞のと紛らわしいので、と二語に分けて書かれることもよくあります。しかし必ず分かち書きにしなければならないというものではなく、不定関係代名詞のほかの変化形と同様、一語でと書かれることもあります。
また中性複数主格・対格では、という形も用いられます。不定代名詞のと紛らわしいので注意が必要です。
不定代名詞は前接辞ですので、不定関係代名詞のアクセントも前接辞のアクセントの原則に従っています。
例えば両数属格・与格のは、antepaenultima(語末から三番目の音節)に曲アクセントがついています。通常のアクセントの規則では、曲アクセントはantepaenultimaにはつくことができませんが、のアクセントは、関係代名詞の後に前接辞が続いたものとして決定されています。
不定関係代名詞は、関係節(先行詞の内容を説明する文)と先行詞とを結びつけ、「〜する(ところの)人は誰でも〜/〜する(ところの)ものは何でも〜」「〜である人は誰でも〜/〜であるものは何でも〜」といった意味を表します。
不定関係代名詞の性・数は先行詞に一致し、格は先行詞とは無関係に、関係文中での不定関係代名詞の役割によって決定されるのが原則です。しかし実際には、関係代名詞と同様、同化や逆の同化によって、原則からはずれた格になることもよくあります。
特に、が先行詞となって(〜しない人は誰一人いない/〜しないものは何一つない)という表現になる場合は、たいてい逆の同化を行いますので、は不定関係代名詞の格につられて、主文の構造とは合わない格になっていることがよくあります。
【例】 「それ以上に理に反するものは何一つない」
「何であれ比べてみて(まだしも)理に適うものはnothingである」=「たいへん理にもとる」
不定関係代名詞は、「何であれそれと比べてより理に反するのではない(=何であれそれと比べれば理に適う)」と比較の対象になっているので、比較対象の属格になっています。
は中性形になって、「もの・こと」を意味しています。また、主文の主語ですので、本来は2.の文のように主格形になるはずですが、実際には1.の文のように不定関係代名詞の格につられて、逆の同化を起こしていることも珍しくありません(参照: 逆の同化)。
疑問代名詞つきの疑問文(補足疑問文)を間接話法にする場合には、直接疑問文の疑問代名詞がに置き換えられることがあります(のままの場合もあります)。このように、は不定関係代名詞としてだけでなく、間接疑問文を導く間接疑問代名詞としても用いられます。
【例】