音節は母音や二重母音の数だけあります。逆に言えば、子音だけの音節は無く、各音節は母音か二重母音を必ず一つ含みます。
子音はほかの子音と連続して発音される場合と、分けて発音される場合があります。
連続して発音されるのは
の場合です。例えばτρという子音群は連続して発音されます。τとρの間に音節の切れ目が来ることはありません。
分けて発音されるのは、
です。例えばμ−π(鼻音+閉鎖音)は必ず分けて発音され、μπがひとかたまりになって音節を形成することはありません。またλλという子音群は必ずλ−λと切り離されます。
σのあとにσ以外の子音が続く場合は、分けて発音されることもあれば連続して発音されることもあります。
母音や二重母音のすぐ後ろに、子音一個だけか、連続して発音される二個以上の子音がついている場合は、音節の切れ目は母音や二重母音と、子音の間にきます。
【例】
母音や二重母音の間に複数の子音が挟まっている場合、その子音群の最初の二つが分けて発音される子音であれば、音節の切れ目は分けて発音される二個の子音の間にきます。
【例】
二重子音を含む語の場合は、音節の切れ目は二重子音の前にきます。
長母音(η,ω)や二重母音を含む音節は本性的に長い音節ですが、ただし二重母音、αι、οιは語末に来る時にのみ短いと看做されます。
音節に含まれる母音が短母音であってもあとに続く子音が二重子音か、分けて発音される二個の子音である場合、その音節は位置によって長いと看做されます。
例えば、αρ−χηのαは短母音ですが、ρχは分けて発音される子音ですので、αρは「位置によって長い音節」になります。
φυ−λαξのαも短母音ですが、ξは二重子音ですので、λαξは「位置によって長い音節」です。
短母音を含む音節で、母音のあとに子音が無いか、あっても一個だけ(二重子音は除く)である場合は、その音節は短音節です。
一番後ろの音節をultima(ウルティマ。ラテン語で「最後の」の意味)、終りから二番目の音節をpaenultima(パエヌルティマ。paeneは「ほとんど」の意味)、終りから三番目の音節をantepaenultima(アンテパエヌルティマ。anteは「前」の意味)と呼びます。アクセントは必ずultima、paenultima、antepaenultimaのどこかにつき、antepaenultimaより前に来ることはありません。
古典ギリシャ語のアクセントは日本語と同じ高低アクセント(pitch accent)であり、英語などに見られる強弱アクセント(stress accent)ではありません。紀元前三世紀頃には強弱アクセントに変りましたが、古典期にはまだ高低アクセントを保っていたのです。
古典期のギリシャ人は言葉のアクセントを熟知していましたから、わざわざアクセント記号をつけて文章を書くことはありませんでした。今のイギリス人がアクセント記号無しでも英語を正しく発音できるようなものです。
しかし、初回で述べたような事情から紀元前三世紀頃からギリシャ語が乱れ始めます。アレクサンドリア図書館長であったビザンチウムのアリストパネース(257−180 B.C.)はこの事態を憂慮し、ギリシャ語が乱れるのを恐れて発音の規則を確立しなければならないと考え、アクセント表記法を考案したと言われています。当時のアレクサンドリアは国際都市であり、ギリシャ語を母語としない人々がギリシャ語を読むためにはアクセント記号が必要だったのです。
このように、アクセント記号は元来ギリシャ語には無かったものですが、中世以降の写本にはアクセント記号がつくこととなりました。アクセントが異なると意味が変る言葉もあるのでおろそかにはできません。
ギリシャ語には鋭アクセント( )、重アクセント( )、曲アクセント( )の三種類のアクセント記号があります。アクセント記号をつける位置は気息記号と同じです。
鋭アクセントのある音節は高く、重アクセントのある音節は低く発音されます。曲アクセントはいったん音が上がってからまた下がることを示しており、母音の前半は高く、後半は低く発音することになります。従って曲アクセントは長母音か二重母音にしかつきません。ただし実際問題としては曲アクセントのある音節は、単に音が高くならないというだけです。
鋭アクセントは、母音の長短を問わずultima、paenultima、antepaenultimaのどこにでもつけられます。ただし、ultimaの母音が長母音や二重母音である場合は、鋭アクセントはantepaenultimaにはつけられません。逆にいえば、antepaenultimaに鋭アクセントがあるならば、その単語のultimaの母音は短母音です。
【例】
ultimaに鋭アクセントを持つ語を鋭調語(oxytone,オクシトーン)と呼びますが、鋭調語は後ろにほかの語が続くときは鋭アクセントが重アクセントに変ります。重アクセントはこれ以外の場合には使われません。つまり、重アクセントはultimaにしかつきません。
ただし以下の場合には、鋭調語であっても鋭アクセントを重アクセントに変えません。
曲アクセントは長母音か二重母音にしかつきません。逆に言えば、, , といった、曲アクセントのついている母音は長いということです。
曲アクセントはultimaかpaenultimaにつき、antepaenultimaに来ることはありません。また、paenultimaに来るためにはultimaは短母音でなければなりません。
ギリシャ語の単語は、アクセントのつき方によって区別されて、次のように呼ばれます。
名詞や形容詞のアクセントは、アクセントの規則の許す限り、できるだけ元の通り(単数主格形の時の位置と種類のまま)でいようとします。
これに対して動詞のアクセントは、アクセントの規則の許す限り、なるべく前に出ようとします。
ギリシャ語の句読点は次の通りです。
ギリシャ語には感嘆符はなく、感嘆文も終止符で終ります。
疑問文には疑問詞を使うものもありますが、語の並びは平叙文とまったく同じでも疑問符(;)をつけると疑問文になります。英語のように主語と動詞の位置を入れ替える必要はありません。
最終更新日: 2002年4月5日 連絡先: suzuri@mbb.nifty.com