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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第8シリーズ 4話 「親父はウザイか?」

乙女(星野真里)から「結婚するつもりはないが一緒に暮らしたい人がいる」と聞かされ、衝撃を受ける金八(武田鉄矢)。3Bでは風邪を理由に欠席を続けるサトケン(廣瀬真平)について、幼馴染の諏訪部裕美(山田麗)はどうも様子がおかしいという。里中家を訪ねた金八は、その気配からサトケンが単純ではない悩みを抱えていると悟るが、父親に邪険にされそれ以上踏み込めない。乾先生(森田順平)によると、野球の名門校からの誘いを断ったのはサトケン本人ではなく父親だという。金八は先の私服登校を思い出し、あれはSOSのサインだったのかと合点がいく。

裕美はサトケンを励まそうとクラスに提案、しかしおせっかいの点数稼ぎと非難され賛同を得られない。放課後、一人で里中家へ向かっていると、ひょんなことから好意が伝わってしまった北山大将(亀井拓)も後を追って合流。サトケンには会えなかったものの、気をよくした裕美は大将にお礼がしたいと、自宅のすし屋「寿司政」で待たせることに。ところが父親の板前・政吉(石倉三郎)が娘かわいさのあまり包丁で脅かし、大将は逃げるように帰ってしまう。

その晩、金八はサトケンの話を聞こうと寿司政を訪問。すると意外にも、以前のサトケンの父親は野球にとても熱心で、むしろ親バカで有名だったという。それが信用金庫の支店長代理に就いた途端に人が変わり、仕事の話しかしなくなったというのだ。金八は驚き、そして考える。

翌日、好きな大将に「親父はヤクザか」と言われた裕美はやり切れず号泣。「ウゼェ」と悪態をつく大将だったが、その裏には自分が父親から暴力を受けているという事情があった。金八は山上憶良が詠んだ親の情愛に満ちた句を授業で採り上げ、生徒たちにもそれぞれの思い出を反芻させながら、「お父さんには優しいという共通点がある。君たちのことを愛しているから無口になる。初めからウザイ親なんていない」と話す。話すうちに金八は乙女のことが思い出されて感情が昂り、ついには泣き崩れてしまう。

裕美に謝ろうと一人で寿司政を訪れた大将は、再び政吉と対峙する。今度は脅かすことをせず、ただ寿司を1カン「食え」と差し出す政吉。恐る恐る口に運んだ大将が「これ超ウメェ!」と驚嘆の声を上げると、不器用な政吉の顔にも微笑みが浮かぶのだった。

07年11月1日放送

脚本: 清水有生

演出: 加藤新

視聴率: 11.4%

参考文献・挿入歌

平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表

塚田りな
(萩谷うてな)
大西悠司
(布川隼汰)
森月美香
(草刈麻有)
北山大将
(亀井拓)
玉田透
(米光隆翔)
茅ヶ崎紋土
(カミュー・ケイド)
漆田駿
(坂井太陽)
五十嵐雅迪
(田辺修斗)
廣野智春
(菅野隼人)
里中憲太郎
(廣瀬真平)
安藤みゆき
(梶尾舞)
諏訪部裕美
(山田麗)
金井亮子
(忽那汐里)
田口彩華
(高畑充希)
江藤清花
(水沢奈子)
渡部剛史
(岩方時郎)
金輪祐樹
(植草裕太)
岩崎浩一
(真田佑馬)
川瀬光也
(高橋伯明)
長谷川孝志
(坂本優太)
中村美恵子
(藤井真世)
平野みなみ
(菅澤美月)
佐藤千尋
(森部万友佳)
和田順子
(井本杏子)
川上詩織
(牛山みすず)
教卓※名前にカーソルを合わせると…?

みどころ談義

● てっきり恋の話は悠司とみなみで進むのかなと思っていたら!
○ いやぁ、参った。すっかりダマされたね! 寿司屋の裕美だったとは。
● いい意味で裏切ってくれました。今回は初めて金八先生の対極的存在じゃない親が出てきたり、今まで懐の深さや落ち着きばかりが目立っていた金八先生が動揺して泣いたりと、全体的にもここまでの三話とは毛色が違ってましたよね。ノートの提出もなくて。
○ そうそう。また似たような物語だったらどうしようかと実は心配だったんだけど、勝手に不安がったりして失礼しましたという感じで(笑)。
● 今回の主役・裕美がまた素朴で素直ないい子なんです。遠慮がちないい子というのももちろんいますけど、裕美の場合は下町的ないい子ですね。サトケンを心から気遣ってハキハキ行動するし、好きな人がバレちゃってもくよくよしないし、大将に「ノート写させてあげるよ!」なんて無邪気なお節介がまた出ちゃうし、お店の手伝いは手際よくこなしているし。
○ サトケンを励ます提案に誰も乗ってくれなかったときはさすがに落ち込んだけれども、先生の前では明るく強がって見せて…。そういう裕美だから、「なんで脅したの!」と父親に食って掛かった次の日に案の定、大将から悪く言われるところなんて可哀想だったな。
● そうなんですよね。でもそれなのにまだ裕美は、大将にも気の毒な部分があると分かるとそれを心配するような眼差しを送って。健気です。
○ 親との関係がすごく大らかだったじゃない。大将を追い返したことでケンカはしていたけれど、会話の内容や手伝いの様子から普段の仲のよさがすごく伝わってきて。このギスギスしない健全な親子関係が、素直で優しい裕美を育んだんだろうな。
● 逆に大将は、親との関係が悪い中で育ったのでああやって突っ張った風になっていたんですね。
○ そうだなぁ。でも裕美と一緒にサトケンの家まで行ってやる優しさがあったし、最後には裕美にきちんと謝りに行く気持ちの変化もあった。そういう大将の意外な内面が見えたのも今回の面白かった部分だね。ただ父親の暴力、これは後々改めてまた持ち上がってきそう。
● 父親と子の関係というテーマですね。金八先生と乙女の関係というのもあって、こっちはかなりギスギスしちゃいましたよ。先生、飲み屋で泣くし3Bでも泣くし(笑)。
○ 飲み屋のシーンは面白かったなぁ。遠藤先生も久しぶりにお茶目で。しかもただ笑えるシーンだっただけじゃなくて、この飲み会のおかげでサトケンの推薦に関する新情報がもたらされるという物語上重要な部分もあったから、余計ポイントが高いよ。
● あれですよね、「この出来事があったから次にこの出来事が起こって…」という必然的な連続性というようなものが今回のシリーズはここまで結構しっかりとあって、だからポイントが高く感じられるんじゃないですか。
○ 今の例で言ったら、「金八先生が乙女の件でショックを受けて、その様子を見て心配した先生方が飲みに誘って、その席でサトケンのことをざっくばらんに相談できて、そしたら乾先生が新たな情報を提供してくれて…」という流れね。サトケンが悩んでいると分かるのは前回の私服登校の件が繋がってのことだし、乙女のことは後半のオチにもしっかり繋がるし。
● 裕美の方だって、サトケンとは幼馴染で、そのサトケンを心配してクラスに提案したことがきっかけで、好きな大将と接近できたわけですよね。そしてその大将への恋の障害になった父親も、ちょっとずつ心境が変化していって、最終的に「子を思う親の気持ち」という今回のテーマの象徴的存在だったと分かるような構成になっているという。
○ うまくできてるよなぁ。いくつかの要素がお互いに絡み合って影響しあって、大きな物語を作っている。一つ間違えばご都合主義の展開と言われちゃうところだから、これからも丁寧な脚本であってほしいよ。まぁ、そのぶんあらすじがなかなかスマートにまとめられなくて、こっちは大変だけど(笑)。
● ははは。嬉しい悲鳴じゃないですか。そういえば話は変わりますが、前回で金八先生のよき理解者ぶりを示した乾先生が、今回も名言を残してくれましたよ! さっきの飲みに誘う場面なんですが、「生徒に悩みがあるときの坂本先生の口癖は『先生に話してくれないか』ですよね。私、坂本先生の“金八先生”になってもいいですよ。」って。さすがです。
○ 嬉しい味方だよねぇ。この後、サトケンの部屋を訪ねた金八先生が、「よかったら先生に話してみてくれないか」とやっぱり言うんだよ(笑)。戦友の分析は鋭い。
● 今回の金八先生の名言は、「愛というのはとても大きな感情。だから言葉ではなかなか伝わらない。それでお父さんは君たちに愛を伝えようとするとき、つい無口になってしまう」でしょうか。強引に説き伏せるんじゃなく、やっぱり詩歌の力を借りて、そして生徒それぞれの思い出に尋ねながら、考えさせた言葉です。「そして君たちもこれからは人を愛し守ることが試される」と続きました。
○ 父親が無口なのは、愛情があまりに深いからか…。少々きれいすぎる気がしないでもないけどね(笑)。でも人の気持ちって、相手に正確に伝えようとすればするほど言葉では言い表せなくなって、上手に伝えられないのがもどかしく、黙るしかなくなってしまう。そういうことはあると思うなぁ。それを実際に証明したのが金八先生自身の涙であり、ラストの寿司政のシーンだったんじゃないかな。
● 「いいから食え!」っていう、あそこですね。
○ そう。あのトロなんだけどさ、大将は最初に寿司政に入ったとき、カウンターに座って、真似ごとで「親父、トロ握って。オレ舌肥えてっからさ!」なんて言っていたじゃない。それを政吉さんはちゃんと覚えていて、じゃあ一丁うまいところをご馳走してやるかと、握ってやったんじゃないのかな。
● あっ、本当だ! ああ見えて政吉さん、優しいんだなぁ…。

その他の周辺状況・小ネタ

乾家の謎?

乾先生が居酒屋に連れてきていた娘の名前は「メグミ」ちゃん。でも待てよ? こんな子いただろうか。

第6シリーズで生まれた乾先生の子は「英彦」ちゃんという男の子だったはずだ。再婚相手の英子の連れ子は女の子だったが、こちらは第7シリーズの時点で既に小学5年生であり、現在は中学2年生になっているはずなので年齢が全く合わない。しかも名前は「トモミ」であった。

ここで注目したいのは、乾先生の「ちょっと女房が上の子たちの急用で…」というセリフ。つまり、トモミや英彦が上にいて、その下にメグミが生まれていた可能性があるということだ。ところが、メグミの年齢は公式サイトによると6歳(註1)。英彦は2001年の年末に生まれているので、現時点で5歳である。5歳の子が6歳の子の兄であるということはあり得ない。英彦の出産時、初めての我が子の誕生に気が気でなかった乾先生の様子を思い出してみても、英彦の前に実子があったとは考えられない。

となると、この子の出自はいったい…。 (物語的には、大人になった乙女とまだ純真な少女とを対比させる意図で登場させたのでしょうが。)

   ◇◆◇

※註1: 11月6日時点で公式サイトの当該文章は削除済み。それまでは「乾先生の愛娘(6歳)の名前はなんでしょう?」と記載されていた。

参考文献・挿入歌・BGM

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