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和歌山人の
【方言・話法編】

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◆基礎チャート(1)-Ⅰ◆ 【本章の目標】和歌山弁を学ぶ姿勢を再確認しましょう
和歌山人たる者
「和歌山弁を使いこなさなければならない」
●当たり前の事です。しかし一番難しい事なのです。常々から和歌山弁での会話を励行し、ネイティブの和歌山弁を我が物とする必要があります。単に言葉そのものを覚えるだけでなく、発音・語感・タイミング・用法など、要求される水準は何れも高いものであります。
●「和歌山弁エクスプローラ」における和歌山語の習得にとどまらず、より洗練された、スムーズで柔軟性に富む、かつ
効果的な使用が望まれるのです。
◆設問◆次の文章を和歌山弁に翻訳しなさい。
「一緒に行こう」
【ヒント・・・ヒントも何も、基本中の基本です。】

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◆基礎チャート(1)-Ⅱ◆ 【本章の目標】敬語は何の為にあるのかを理解しましょう
和歌山人たる者
「敬語が苦手でなければならない」
●和歌山弁は、数ある方言の中でも特筆される、「敬語が存在しない」言語であります。大阪・京都などで多用される「〜しはる」は、和歌山では使いません。ただ、辛うじて一部に、丁寧語に分類されるであろう表現はあります。「〜しよし」「〜したらわ?」そしていわゆる「のし言葉」などがそれ。単語としては「おいでる(=いらっしゃる)」というものもあります。が、いかんせん稀有なケースであります。
●和歌山ローカルでは著名な落語家、桂文福氏が弟子入りを志願する際、師匠(当時の三代目桂小文枝氏)になんと言ってお願いしたと思います?「なにとぞ、わたくしめを師匠の弟子にして頂けませんでしょうか」な〜んて言うわけないっす。ズバリ
「わえを、おまんの弟子に、してけーよー!」なんですよ!?信じられますかアナタ。こんなもん、頭オカシイとしか思えませんよ普通。ツレにゲームの攻略法を教えてもらうんじゃないんだから。日本の誇る伝統芸能を教わるんでしょ。それでも弟子にしてもらえたんです、彼。もしダメだったら「このアッポケが!!」などと親戚一同に蜂の巣にされていたかもしれません。ですが事実、無事(?)採用決定。文枝師匠、えらい!・・・のだろうか?
●要するに、和歌山人の会話は言葉でなく、気持ちが大事だということです。和歌山人の魅力として挙げられるそのうちのひとつは、
敬語がないぶん気持ちで話をしているというところです。小手先の会話術でなく、会話そのものが話者の自己紹介とでも言えるくらいに人格を反映させるものなのです。敬語が苦手というよりも、和歌山人相互のコミュニケーションにおいて敬語という会話上のテクニックはかえって邪魔になるのです。気持ちを込めて、会話をしましょう。
●ただし、明らかに目上の人に話す時は、イントネーションは関西弁で、言葉そのものはきっちり敬語や丁寧語を使いましょう。間違っても文福氏のマネなどなさらぬよう、五寸釘を用意しておきます。
◆設問◆次の状況におけるあなたの発言を和歌山弁に翻訳しなさい。
状況・・・《あなたは職安で見つけた職場に就職する為、面接を受けています》
そこでのあなたの発言
「よろしくお願いします」
【ヒント・・・雇う者、雇われる者の立場を考えて。】

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◆基礎チャート(1)-Ⅲ◆ 【本章の目標】「ザ行」→「ラ行」変換の歴史と使い方を学びましょう
和歌山人たる者
「ザダラ変換に基づく会話を行わなければならない」partⅠ
●和歌山弁のイントネーション(抑揚)は、会話全体をみると基本的に関西弁、大阪弁と呼ばれるものと良く似ています。無論、単語(特に固有名詞)一つ一つをみていくと独特のものは有るにしても大体同じです。発音の点で決定的に大阪弁と異なるのは、「ザダラ変換」を行うということです。
●例をあげてみましょう。
「ザ行⇒ダ行」の例
「どうきん(雑巾)」「でんだい(善哉:ぜんざい)」「れいどうこ(冷蔵庫)」など。
「ダ行⇒ザ行」の例
「サラザ(サラダ)」「ざついじょ(脱衣所)」など。
「ダ行⇒ラ行」の例
「めらか(メダカ)」「ころも(子ども)」「いろみず(井戸水)」「かだら(体)※」など。
「ラ行⇒ダ行」の例
「おいだん(花魁)」「かだら(体)※」
●※印のついている「かだら(体)」では、ザ行・ダ行それぞれ入れ替わっているという特殊なケースです。多用される単語なので是非皆さんにも会得して欲しいものです。
●さてザダラ変換の起源については、その筋のプロの方がわざわざメールで教えて下さいました。まずはお礼を申し上げ、紹介させて頂きたいと思います。

「四つ仮名の混同」という日本語史上の出来事をご存じでしょうか。16世紀に、ザ行の「じ・ず」とダ行の「ぢ・づ」の発音の区別がなくなった出来事です。今ではほぼ全国的にこの4つは、発音の区別がなくなっていますが、和歌山はこれを10にまで進めたのです。つまり先進性の現れ、先駆的な試みだったのです。


●要するに
「ザ行5音、ダ行5音」の合わせて10音が混同されるようになったわけです。16世紀といえば、室町後期〜安土桃山時代ですね。雑賀衆が秀吉に倒され、和歌山城が築かれたのが1585年ですから、その辺りでしょうか。なぜそういうことがあったのか、という事は分かりませんが、「ザ・ダ」変換はすでに400〜500年の歴史があるということですね。
●最近和歌山市内では、若年層がこのような発音をすることは極めて稀になりました。中年〜高年層が主にザダラ変換で喋ります。つまり
中高年層なのにザダラ変換をせず話している人は、おおよそ他府県出身であると推測できます。若年層の場合は、上にあげた例のような単語の発音を、微妙にぼやかす、つまり「ザ」と「ダ」と、どちらにも聞こえるような発音をマスターすれば完璧です。
◆設問◆次の単語をひらがなで和歌山弁に直しなさい。
1、「心臓」 2、「雑煮」 3、「古座川町」 4、「シャアザク」 5、「007」
【ヒント・・・「ザ行」→「ダ行」の鉄則を遵守すれば大丈夫】

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◆基礎チャート(1)-Ⅳ◆ 【本章の目標】「ダ行」→「ラ行」変換の原理について学びましょう
和歌山人たる者
「ザダラ変換に基づく会話を行わなければならない」partⅡ
上のpartⅠで、「ザ行」→「ダ行」について学びました。では、「ダ行」→「ラ行」の変換はなぜ起こるのか?こちらに関して、海外で言語学を専攻しているHN「大和魂」さんから、大変貴重なお話を聞く事ができました。

◆和歌山弁のザダラ変換のダ→ラについてですが、英語にも似たようなものがあります。
◆まず、日本語のラ行についてですが、これは、ローマ字表記では"r"で綴りますが英語の"r"とは違い、言語学では"flap sound"と呼ばれるものです。舌先を歯茎でピシッと弾く音です。弾かないと"l"(エル)になり、二度以上弾くと「こるるるぁっ」などによく使われる巻き舌になり、歯茎についてる時間が長すぎるとdになる、難しい発音です。(最近の若い日本人は「ら、れ、ろ」を"l"(エル)で発音する傾向にあるそうです。)
◆もともと"d"と日本語のラ行は、かけはなれていそうで、とても近い関係にあります。違いはただ舌が歯茎についてる時間の長さだけなのです。
◆"d"→flapの例(まさに和歌山弁と同じ)では"medal(めろぉ)"、"ladder(ららぁ)"などがあります。実際、英語の会話では"latter(後者)"、"ladder(はしご)"、"metal(金属)"、"medal(メダル)"の発音はともに「ららぁ」、「めろぉ」になってしまい聞き分けは文脈で判断ということになります。
◆要するに、皆が思うほど、ダ行とラ行はかけはなれていないのです。


●なるほど!大和魂さん、ありがとうございました。
和歌山人にとっては、「ザ行」「ダ行」「ラ行」の3つは非常に近い発音体系を持っていることがわかりましたね。partⅠとpartⅡを通して、要点は二つに絞られました。
◆まず一つは、
「ザ行」と「ダ行」は『四つ仮名の混同』により変換が決定されるという点。
◆もう一つは、
「ダ行」と「ラ行」は言語学上、発音が非常に近いものなので変換されてしまうという点。
●要するに『ザダラ変換』は、これら二つの要素が絡み合って起こるというわけなのです。ちなみに「ラ行⇒ダ行」の変換は少ないです。法則の通用しないものも多いので、無理に変換しなくていいです。
◆設問◆次の単語をひらがなで和歌山弁に直しなさい。
1、「大根」 2、「うどん」 3、「サラダ」
【ヒント・・・ザダラ変換の鉄則を遵守すれば大丈夫】

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◆応用チャート(1)-Ⅰ◆ 【本章の目標】最小限の表現で相手に理解を強要する特殊スキルを学びましょう
和歌山人たる者
「指示代名詞を駆使して会話しなければならない」
●和歌山人は、指示代名詞を多用する傾向がたいへん強いです。指示代名詞とは「あれ」「これ」「それ」「あの」「この」「その」等の、いわゆる「こそあど言葉」だと思ってください。
例えば・・・
◆「山田さんは決算の書類をどこに置いたのだろう」
を和歌山弁に翻訳すると、
◆「あの子、あのナニゃどこ置いたんなら?」
となるわけです。
●相手が理解していようがいまいが、とにかく
開口一番それでいくのです。もし、本当に誰かにその事を尋ねたい場合でも、一発目は代名詞を駆使して話しましょう。まずこの段階では、「私は何かを探しています」というニュアンスを相手に伝え、さらにはひそかに「あなたどうせヒマなんでしょう、だったらあなたも一緒に探して下さい」というサブリミナル的プレッシャーを与える事も可能です。そのうえで相手が「アレて何や?」と聞いてきたら、初めて「アレてあのナニやがなホレ・・・書類やしょ、決算の」と詳細について明かすのです。ここまでくればあなたの勝ち。相手はすでにあなたへの「協力体制」へのカウントダウンを聞いている状態です。
●そして「あの子て誰やねん」と聞いてきたら、「あの子よー、ホレ・・・背ぇのたっかい、メガネかけた子やしょ」等、直接真相を明かさずに
周囲の情報から次第に公開してゆき、なかなか分ってくれない相手にイライラするのもまた良いものです。もうこの段階ではすでに、相手は「あなたワールド」のシモベ。釈迦の手の中のゴクウ状態。スキル次第では代名詞のみの会話で相手をいかようにも動かす事ができます。とにかく、この様なケースは日常多々あるわけで、時間と相手の精神状態に余裕のある時に試してみて下さい。
●では、指示代名詞の多用がなぜ起こるのか?それは頭の中で整理してきちんと話す以前に、とにかく
「何か訴えたい事がある」という事を、会話の本筋が他の話題に移行したり相手が立ち去ったりする前に、アピールする目的があるからです。会話上におけるこの、まるでムナグラを掴んで「まずワシの話を聞け」と言わんばかりの押し出しの強さ・・・これを身に付ければ和歌山人との会話に遅れを取るケースはおおむね減少し、和歌山人会話のリズムを身につけることにも繋がります。ましてや独り言の場合においてはなおの事、代名詞のみを最大限活用してつぶやけば、かなりの和歌山弁スキルを獲得する事が可能となります。
◆設問◆次の会話を和歌山弁に翻訳しなさい。
「彼は本当にバカだなあ」
【ヒント・・・「彼は」「本当に」「バカだなあ」をそれぞれ変換し、一つの文に。】

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◆応用チャート(1)-Ⅱ◆ 【本章の目標】再会を喜ぶバリエーションを増やしましょう
和歌山人たる者
「久しぶりに会ったときの挨拶を使い分けなければならない」
●まずは代表格から。「おまん、生きちゃーったかい」これは親しい間柄で交される、いわゆる「キミ、元気だったかい」の意味を持つ挨拶です。おおむねテンションは高めになります。この前に「あでよ!(あらまあ)」等の感嘆詞を加えたりすればもう完璧です。照れずに、大き目の声を出して感動を表現しましょう。
●また、かなり久しぶりならば、
「どうよ〜!」がよいですね。これも少々テンションを上げ気味に言いましょう。大変アバウトな言葉ですので、具体的に何を聞いているのか言われた方は分からないと思います。ですが声を掛けた方も、驚き半ばではっきり何を言いたいのかよく吟味してない事が多いですのでその場の雰囲気や、久しぶりに会えた経緯などを踏まえて、体調の事や仕事の状況、または生活についてのコメントなど、ある意味自分で話しやすい事を返答すればいいです。「ぼちぼち、元気にやってら」「あかな〜、ちいとも儲からん」「そうやして、うっとこの子、もうがっこいきやして」など。
●これに関連して、他にも
「久しいわいて〜?」という言い方もなかなか味わいがあります。これはあまり興奮せずに、ゆっくり言いましょう。その後「まあ座んなあよ・・・なんぞ飲むかい?」などしばし歓談の場を設け、のんびりと再会の時を楽しむのがこの挨拶には良く合います。なぜこの言い方だけ落ち着いているのか?それはこの言い方が「会う事がある程度予測できる場合」に使われる事が多からです。また、いつも落ち着いている、行きつけのお店のおばちゃんなんかが「最近、顔見なかったんで寂しかったよ」的ニュアンスを見え隠れさせつつ使うと最高の雰囲気が醸し出されます。また同様に「生きちゃーったかい」もOK。少しおとなし目に言いましょう。
●ちなみに上の3つは
組み合わさる事もあります。この場合「あれどうよー!えぇ〜?おまん、生きちゃーったか!?ひさしいわいての〜」となります。これをスムーズに言えるか言えないかは、和歌山度に関わる重要なスキルですので、機会を作ってわざと久しぶりに誰かに会うなどしてネイティブの使い方を学ぶのも効果的です。
●最後に一つ、
「達者なかい?」というのもありますが、ほとんど年配の人しか使わないので、ニセ和歌山人が言うとかえって雰囲気を損ないやすいです。素人が手を出すには少々危険な表現です。どうしてもこれを使いたい場合は、十分な和歌山度スキルを得てから冗談交じりに使ってみて、少しずつ我が物にしてゆくのがよいでしょう。
◆設問◆次の質問に対するあなたの答えを述べなさい。
「達者なかい?」
【ヒント・・・関西商人にならないように。】

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