指示代名詞は次のように、ほぼ第一・第二変化をします。呼格はありません。
基本的には第一・第二変化ですが、男性・女性の主格(単数・複数)の時には語頭のτと、中性単数主格・対格の語尾のνがありません。
また、は-ου-が語幹に出ますが、語尾にαやηが来る場合は、-ου-が-αυ-になります。
女性形の単数・複数の主格形(、)は、強意代名詞の女性形の単数・複数の主格形(、)と紛らわしいので注意が必要です。
は、冠詞と接尾辞を組み合わせた合成語で、語尾のの部分ではなく、冠詞にあたる前半の部分だけが格変化します。
アクセントを決定する場合にも、合成語(冠詞+接尾辞)ではなく別々の二語(冠詞と前接辞)であるかのように扱われます。がultimaとは看做されていないため、などは、原則(ultimaの母音が短母音()でpaenultimaの母音が長母音なら、paenultimaは曲アクセント)から外れたアクセントになっています。
また語末の−εは、直後に母音で始まる語が続く場合は、省音されます。
は(あそこで、あの場所で)という副詞にという接尾辞をつけたものですが、の場合とは違って、ふつうの名詞や形容詞と同様に語尾の部分が格変化します。
は聞き手にも話し手にも近い(話し手にとってはよりは遠く、よりは近い)事物や人を指します。便宜的に「その」と訳をつけましたが、日本語の「その」のように「自分(話し手)よりも相手(聞き手)に近い」というわけではありません。「あの」「あれ」に対応する、「この」「これ」と訳すほうが適切な場合もあります。
も他の指示代名詞と同様、独立して「それ」「そのもの(人)」「そのこと」「そなた」と指示代名詞として用いるほかに、名詞と組み合わせて「その少女」「その机」というように指示形容詞として使うこともできます。
の場合は「話し手に近い」ということだけが肝要なので、聞き手がの内容を知っているとは限りませんが、は話し手だけでなく聞き手にも近いものを指し、聞き手も知っていることを前提しています。そこで、「既に述べたそのこと」「以上のこと」というように、既出のことを指すのにも用いられます。
【例】
ただしは「以下に述べること」「次のこと」を指すことがあります。
指示代名詞には呼格はありませんが、は、主格形にという間投詞をつけて「おお、そなた」「もしもし、そこのお方」というふうに呼びかけの常套句として使われました。
はと組み合わされて「後者」を意味することがあります。この場合、が「前者」になります。
は、(よりも)話し手に近い人や事物を指します。とは違って聞き手とは無関係で、「話し手に近い」「自分には馴染みである」ということが要点です。聞き手にも近い(聞き手も知っている)かどうかは問題にならないので、聞き手がの内容を知らない場合にでも使うことができ、話や文の中でこれから述べられること、「以下のこと」「後述のこと」を指すことがあります。
【例】
ほかの指示代名詞と同様、独立して「これ」「このもの(人)」「このこと」「こなた」と指示代名詞として用いるほかに、名詞と組み合わせて「この少女」「この机」というように指示形容詞として使うこともできます。
は聞き手からも話し手からも遠いものを指します。ほかの指示代名詞と同様、独立して「あれ」「あのもの(人)」「あのこと」「あのかた」と指示代名詞として用いるほかに、名詞と組み合わせて「あの少女」「あの机」というように指示形容詞として使うこともできます。
またと組み合わせて「前者・後者」という意味になります。が「前者」です。
などは、指示代名詞として(「これ」「彼」「その人」)使われるほか、指示形容詞(「この〜」「あの〜」)としても使われます。
などは、次のように代名詞として独立して使われます。
【例】
またこの用法の属格(「彼の」「彼女の」「それの」)は、所有代名詞の代用として使われます。この時、などは、通例、名詞と冠詞の間に入ります(属性的位置)。
【例】
名詞と組み合わせて、名詞を修飾する指示形容詞としても使われます。この場合、名詞にはふつう冠詞がつけられますが、ふつうの形容詞と違ってなどは名詞と冠詞の間(属性的位置)には入りません。常に名詞と冠詞の組み合わせの外に置かれます(述語的位置)。冠詞と名詞の間でなければ、前に置いても後ろに置いてもかまいません。
これはふつうの形容詞であれば「AはBである」と述語になる語順ですが、などの場合は「AはBである」ではなく、「このAは」「そのAは」という意味になります。
【例】